国債利回りと価格の関係――国債の金利が上がると価格は下がる
国債の利回りと価格は、逆の動きをします。
画像は日本10年債チャートです。
国債の取引価格と市中金利が逆の動きをする仕組みについて、今回は超簡潔に説明してみます。
国債の金利が上がると価格は下がる。その仕組み。
国債は政府が発行する債券で、発行時に満期までの金利が確定しています。
たとえば「10年物国債・額面価格100円・金利1%」を購入すると、投資家は10年後に100円を受け取る権利を得ます。さらに毎年1円の金利が得られるので、10年間で合計110円が得られます。100円を支払い、10年後に110円を受けとる権利を得るわけです。
投資家にとって、国債とは定期預金みたいなものですね。
ところが、定期預金とちがって、国債は他人に転売することができます。
たとえば上述の10年物国債を購入した人が、7年後に急病で入院するなどして、まとまったお金が必要になったとしましょう。
彼は手持ちの「10年物国債・額面価格100円・金利1%」を市場で販売することができます。
この国債は、満期まで残り3年です。つまり、この国債を持つ人は、「3年後に100円を受け取る権利と、満期までの残り3年間、毎年金利1%を受け取る権利」が保証されます。
この国債はいくらで販売できるでしょうか。
単純に計算すると、100円です。
残り3年の中古国債(既発債といいます)を100円で購入した人は、3年後に103円を受け取る権利を得ます。
しかし政府は毎年、国債を発行しています。
なんらかの理由で、政府が新規に発行する国債(新発債といいます)の利息が上がったとしましょう。
たとえば、新発債の金利が2%に上がったとするならば、その新発債には「10年物国債・額面価格100円・金利2%」と記入されています。この新発債を購入すると、10年後に合計120円が受けとれますね(100円+10年間の金利合計20円=120円)。
新発債と既発債は、市場で競合しています。
購入者にとって、国債が新品か中古かは関係ありません。購入者はお得な方を買おうとします。
7年前の既発債は、金利1%で固定されていました。既発債は金利が低いので、誰も欲しがりません。
そうすると、既発債を売りたい人は、販売価格を下げざるを得ません。そうしないと、誰も買ってくれないためです。
以上をもう一度振り返ってみましょう。
7年前に比べて、政府が発行する国債の金利は上昇しました。
一方、国債の取引価格は低下しました。
すなわち、国債の利回りが上昇すると、取引価格は低下しています。
反対に、国債の利回りが低下すると、取引価格が上昇するのも、同じ仕組みによるものです。
ちなみに国債価格(左軸)を上下反転させると、国債利回りの動きときれいに一致します。
追記
本当はもう少し複雑だと思いますが、今回はこれくらいで勘弁してください。
なお、今回の説明では「金利」と「利回り」を区別していません。ざっくり解説ですいません。(^^;
一般的には、「金利」は額面価格に対する表面利率(発行時に確定)のことで、「利回り」は投資額に対する年間の収益率を指すようですね。
たしかに「金利」と「利回り」の区別は、国債を保有する投資家にとって重要ですが、一般的な説明には必要ないと判断し、割愛しました。
ちなみに上の説明では、原因はあたかも政府の金利操作にあるかのような印象を持つかもしれません。この辺りは文章で表現することが難しいのですが、「国債について、利回りと取引価格の、どちらが原因でどちらが結果か」というより、「両者はただ連動するだけである」と私は理解しています。
政府もある意味では市場の一員であり、決して国債の金利を自由に決められるわけではありません。市場が決める金利に合わせて、政府は新発債の金利を上下させるともいえるからです。
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